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***交通事故体験談***
- 122 ななし@マターリ 2005/03/17(Thu) 14:36
- 母さんが死んだ。
オレが17の冬。
きっともうじき三ヶ月くらいにはなるだろう。
ありふれた交通事故だった。
一台の車が赤信号なのに交差点へ進入し、右横から別の車に突っ込まれた。
恨むべき相手であるはずの信号無視をしたその人間は運転席でその時もうぐしゃぐしゃに潰れてた。
突っ込んでしまった車の男性は、鞭打ち症だけで済んだ。
そして、その時にたまたま交差点のところを歩いていた母のところに弾かれた車が突っ込んで来た。
―――ただ、それだけ。
ただ、それだけのことだけど、それがオレの人生を変えるには十分だった。
高校を辞め、働き始めたことが最初だっただろうか?
母子家庭だった所為で、一人暮らしにもなった。
母は尊敬できるような人間で、借金等がなかったのが救いといえば救いだ。
涙はなかった。
こんな生活をしているとつくづく思う。
どうしてオレ、生きてるんだろうって。
いつも、いつも、考える。
答えは出ない。
出るはずなんてないんだけど、考える。
一昨日。
鞭打ち症で済んだ男性を見かけた。
12,3歳の少女と一緒に歩き、酷く幸せそうな顔をしていた。
道路を挟んで向こう側なので、大した距離じゃない。
―――だけど、遠く感じた。
同時に、恨めしいという感情が湧きあがっていた。
そして今―――
その男はオレの足元にいた。
―――オレの体は赤く染まっていた。
夕日に照らされ、光る紅は美しかったと思う。
その紅の主は、オレの手によってすでに母と同じ所へ行っていた。
そして、気がつく。
自分の後ろに、その男と一緒にいた少女―――おそらくは男の娘であるその少女が立ち、こちらをただ色のない瞳で傍観するように見つめていた。
(………これで、オレは犯罪者だな………)
他人事のように思う。
自分を自分と認識するために必要なモノなんて分からなかったけど、少なくともそのどれもが今の自分に欠落しているのは分かった。
今此処にいるのは自分じゃない、そうとまで思えた。
自分の存在なんか、もうどこにもないんだから。
………だから、他人事のように思う。
少女は沈黙し、ただこちらを見ていた。
体、顔立ち、髪の毛。
少女の持つ全部、命あるモノの色合いと雰囲気を放っている。
だけど、その中で瞳だけはその輝きを失い、ただ夕日の茜に染まっていた。
―――少女は言葉を発する。
「………ねぇ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
そして―――少女は問う。
『………命って、なぁに? お兄ちゃん?』
無垢な表情に、ただ光を反射するだけの瞳。
―――その出会いは、印象的だった。
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